ローレン・モレ氏は、米国の地質学者、国際的な放射能汚染の専門家、カリフォルニア州バークレー市の環境委員。1980年代にローレンス・リバモア核兵器研究所でヤッカマウンテン高レベル核廃棄物貯蔵所プロジェクトに参加。1991年プロジェクトとリバモア研究所の科学的不正を内部告発し話題を呼んだ。
各国政府や原子力を推進する側の関係者は、放射能は微量であれば人間に影響はないと主張する。しかし一方、微量でも健康に影響があると指摘する研究者が増えている。そのひとりである放射能汚染の専門家ローレン・モレさんに聞いた。
▽劣化ウランのナノ微粒子が世界中に拡散▽
私は大気圏内の浮遊塵の動態を4年間研究してきました。その結果、核実験や原発によって放出された放射能の塵が、世界中に拡散していると確信しました。
米国はアメリカ西海岸のネバダ核実験場で1000回以上の核実験をしました。フランスはサハラ砂漠で、中国はゴビ砂漠で核実験をしました。この3箇所の核実験場で発生する砂嵐には放射性物質が大量に含まれており、それが世界中にばらまかれてきたのです。
近年は劣化ウラン兵器の放射能塵が加わりました。劣化ウラン兵器は使用時に燃焼してガス化します。金属はガス化すると微粒子になるのですが、劣化ウランの場合は高温で燃焼するのでほとんどがナノ微粒子になります。ナノ微粒子は粒子径(直径)が1から100ナノメートル(ナノメートルは10億分の1メートル)程度のものを指します。ウイルスと同じないしはそれよりさらに小さいものです。ナノ微粒子となった劣化ウランは浮遊して世界中に拡散します。
このように私は劣化ウランによる放射能の塵が世界中に拡散していると主張してきました。しかし裏付けとなる計測データは何もありませんでした。各国政府は大気中の放射性物質の濃度を計測しているにも関わらず、それを公表せずに隠してきたからです。けれども計測データが今年の3月、イギリスで明らかとなりました。
イギリスにクリス・バズビー博士という科学者がいます。独立系の科学者ですが、イギリス政府の低レベル放射能の委員会やEUの低レベル放射能の委員会に所属しており信頼できる科学者です。そのバズビー博士が、情報公開法によってイギリスの核兵器工場の放射線モニターのデータを公開させたのです。
劣化ウランのナノ微粒子はアフガニスタンやイラクから、7日から9日間でイギリスに到達します。計測値のピークは劣化ウラン兵器の使用状況とぴったり一致します。
トラボラ攻撃の際には放射能の濃度は1000ナノベクレルに到達しています。核兵器工場は原発と同じように放射能漏れをチェックしており、1000ナノベクレルを超えたら政府に報告しなければいけない義務があります。本来ならば警戒しなければいけない値ですが、イラク戦争開戦時にはその2倍の濃度になっています。
バズビーさんの計算によると、モニタリングしているところから130キロ内に住んでいる人は、2週間で230万個の劣化ウラン粒子を吸い込んだことになります。1個の粒子だけでガンを起こせるのですから、その影響の大きさが分かると思います。
日本では1991年以降にガンの死亡率が急激に上昇しています。これは劣化ウラン兵器による放射能の影響と考えられます。劣化ウラン弾による放射能の拡散は、高度3000メートル程度の範囲内で起き、2ヶ月ほどでほとんどが地上に落ちます。中東で使用された劣化ウラン弾の放射能は、砂嵐などで世界中に拡散したのです。

